午前2時、まんのう町チャレンジセンターいきいき館に明かりが灯る。「そりゃたいへんやけど、もう慣れたわ。」と気さくに話すのは、財団法人ことなみ振興公社の仁谷榮雄さん。売り場に商品が並ぶと、午前中には完売してしまうほどの人気を誇る“みかどの豆腐・揚げ”を作っている豆腐職人だ。
まんのう町の琴南・美合地区は、もともと岩豆腐と呼ばれる固い田舎豆腐が有名。山里であるがゆえに、お客さんが豆腐を持って帰るときに、遠い山道を型くずれしないようにと固くしたのが喜ばれて名物になったようだ。しかしながら、近年の過疎化の進行などにより、かつては十数店舗あった豆腐店も今では数店舗に激減。その現状に「ええもんは、ずっと残していかないかん」という思いで、仁谷さんを中心とする“みかどの豆腐製造グループ”が立ち上がった。といってもグループメンバーは、元郵便局員という仁谷さんをはじめ、誰もが豆腐を作ったことがない素人ばかり。豆腐作りの基本は知人の豆腐屋さんに教えてもらったものの、あとは自分たちで試行錯誤する日々が続いた。
それでも「やるからにはどこにも負けん豆腐を作らんと」と仁谷さん。持ち前の負けん気が今のみかどの豆腐を完成させた。「豆腐作りは、ほんまに奥が深い」という言葉に、決して妥協しない豆腐作りへのこだわりが感じられる。
まんのうの田舎豆腐を未来へ。
明日もまた、仁谷さんは誰よりも早く朝を迎える。