満濃地区にある吉野公民館へ取材にお伺いしたのは午前9時、地元コーラス同好会の生徒さんが徐々に集まり始める。ここで数年前より伴奏・監修者として指導に当たられている“ピアノ講師”そして“音楽療法”にも明るい山神さんに今回はスポットを当てたい。
ピアノ教室の先生として毎日子ども達にレッスンを行う傍ら15年前より香川音楽療法学会に所属、音楽と医療の関係を学び、医療機関・福祉施設・学校等で音楽の楽しさを伝えつつ、その効能を発現すべく普及活動を続けて来られた。そんな山神さんだが、学生時代はひたすら忠実に楽譜どおりにピアノを弾くため日々練習に明け暮れていたという。後に音楽療法に出会い活動を重ねていく中で、いろんな人々や様々なジャンルの音楽に触れ、みんながひとつになって楽器や身体でリズムを表現する…まさしく文字通りに『音を楽しむ』ことを体得し音楽に対する気持ちに変化が表れた。それは子ども達へのレッスンでも同じ。一律的な流れからそれぞれの子どもの特性・よさを尊重し個性に合わせた指導へと、ご自身の子育てによって学んだ経験も活かされている。
「勉強し努力し続けることはもちろん大切。でも何よりもまず楽しむことが大事ですね。」山神さんは優しく微笑みながら語られた。「ピアノには音楽を超えた“学び”があるんです。」… ??? まったくの門外漢である私には山神さんの言葉の意味がすぐには分からなかった。今レッスンに通われているお子さんの中で最年少は3歳。最初は音階から教えていくのだが、ト音記号をなぞったり、5線譜上にドレミを〇で書くことにより、手指の動きが滑らかになり、字の練習へも結びつく。また、音符を学習すれば、『分数』の理解が備わってくる。楽しみながら他のお勉強にも繋がっていくのである。そして『発表の場』、人前でピアノを弾くことでメンタル面でのタフさも培われる。なるほど!ピアノは、聴いて・見て・感じて・触れて…知性と感性を最大限に引き出す“万能の教材”と捉えてもいいのかもしれない。
成人となったかつての教え子達が今も仕事帰りに立ち寄りピアノを弾きに来るという。「教えることの喜びや人との繋がりに関わりながら楽しむ事ができて、今とても幸せですね。」嬉しそうに話す、終始柔和で穏やかな表情がとても印象的な山神さんであった。